残暑を乗り切るのに必要な曲3選

8月も残りわずか。9月と聞くと一気に秋感が増すが、夏の暑さは粘り強い。
イベントだらけの夏休みの疲れを癒やしつつ秋冬に向けて気持ちを整えてくれるような曲を勝手に3曲、ジャンルレスに紹介。

Kilo Kish “Navy”
LAを中心に活動しているキロ・キッシュ(28)。
彼女の名前を一度検索してみて欲しい。歌手、ソングライターを始め、モデル、女優、デザイナー、画家...とどまるところを知らない彼女の活躍に驚くことだろう。ヴィジュアルアーティストとしての顔も持つ彼女が、3年前、アメリカの人気ブランド「メゾンキツネ」とのコラボを果たしたことを記憶する方も多いのではないか。

そんなマルチな歌姫が音楽を通して創り出すのは、アートでエクスペリメンタルな世界。スタイリッシュなトラックに独特の緩さとアンニュイさを兼ね備えた彼女の曲は、心地よい革新性を伴って私達を魅了する。
今回ここで取り上げるのは2012年9月に発売された“Navy”。聴き手を全く疲れさせない上品なラップに加え彼女の色がしっかり出ているこのサウンド、聴いているだけでクリエイティブな気分にさせてくれる。


Mac Ayres “easy”
知人に勧められ、初めて彼の曲を聴いたときの衝撃は今でも忘れられない。90年代のネオクラシックを彷彿とさせるジャジーでメロウなサウンドに、マックの甘く切ない歌声、一度聴き始めたら抜け出したくなくなるこの感じ…全てが私の好みに当てはまっていた。

マック・アイレスはNY出身のプロデューサー/トラックメイカーで、今はボストンを拠点に活動している。
驚いたことに歳は21とかなり若く、彼の作る静寂で大人びた曲からは想像もつかない。上原ひろみやチャーリー・プースなどを輩出した名門バークリー音楽大学で学びつつ、アメリカやイギリス、更に今年の5月にはジャカルタでもツアーを行っており、まさに今後期待すべき若手だと言える。
今回お届けするのは彼の初のEP集、『Drive Slow』より、“easy”。メランコリックな歌声に優しく刻まれるビートとエレピが心地よい。ちなみに、自身が影響されたアーティストとして、D’Angelo、Stevie Wonder、J.Dillaを挙げているマック。私も大好きなアーティストばかり。ハマるわけだ。

Billie Holiday “I’ll Be Seeing You”
さて、ここまで現代を率いるミレニアルズを紹介してきたが、最後に紹介するのは、1930~50年を舞台に活躍したディーヴァ、ビリー・ホリデイ。
サラ・ヴォーンやエラ・フィッツジェラルドと並んで女性ジャズボーカリストの御三家に数えられる彼女の歌声は、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。2003年にイギリスの音楽雑誌「Q」が選んだ歴史上最も偉大な100人のシンガーのうち12位に名前が上がったように、甘く力強いその歌声は時代を超え、人々を魅了してきた。
歌手として成功を収めた一方で、彼女が過ごした人生の暗い局面をご存知だろうか。彼女の活躍した時代と、彼女が黒人女性であることを考えれば想像がつくだろう。白人と同じ舞台で歌うことを拒否されるばかりか同じホテルに泊まることさえ許されない。仕事上の男性パートナーに収入を奪われる。そんな生活は彼女を薬とアルコールに依存させてしまい、44歳という若さで亡くなってしまった。

ビリーは普段穏やかで優しい女性だったという。実際は名声を手に入れれば入れるほど複雑な心境だったろう。それでも彼女の曲が今日の私達に訴えかけてくるものがあるのも確かだ。彼女の歌声にはいつも魂がこもっている。
平成最後の夏を約70年に渡って愛される彼女の歌声とともに終えてみるのもいいではないか。

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